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里山資本主義と里山共産主義

里山資本主義と里山共産主義

『里山資本主義』という本が注目されていますが、とてもいい本だと思います。マネー資本主義に対抗するサブシステムとして提唱されていますが、様々な意味で『百姓レボリューション』と発想が近いです。『百レボ』のほうは里山共産主義といったほうがいいぐらい、より過激ではありますが。(笑)

マネー資本主義とは

『里山資本主義』で定義されているマネー資本主義とは、簡単に言うと金融経済のことです。100年近く続いた「アメリカ型資本主義」は製造業を中心に発展してきました。その代表たるものが自動車産業で、アメリカ経済は、GM、フォード、クライスラーなどの自動車企業によって引っ張られてきました。しかし、それらビッグスリーの凋落でアメリカ経済も後退しはじめました。その時、考え出されたのが金融経済です。せっせとものをつくりそれを売って稼ぐのではなく、お金でお金を生み出す経済が急速にふくらんでいったというのです。

しかし、その金融経済は2008年にリーマンショックを通して世界経済に壊滅的な打撃を与えました。

その時に、経済のあり方を根本的に見直さなければならないという議論が起き、書店にも新自由主義的な経済システムを疑問視する本が大量に並んだのです。それは、単に金融経済だけに対する批判ではなく、化石燃料に基づいた経済システム、グローバリゼーション、成長という概念など、今までの経済全体を対象にしたものが多くありました。

しかし、それはすぐ忘れ去られ、マネー資本主義は続いていきます。そして、現在行われているアベノミクスというものはその延長線上にあるだけでなく、さらに悪化したものであると言えます。

『マネー資本主義: 暴走から崩壊への真相』 (新潮文庫)

『百姓レボリューション』に登場する「システム」

小説『百姓レボリューション』には「システム」と呼ばれるものが登場します。これは主人公の一人である小野寺隆が事あるごとに言及しているものですが、資本主義経済システム、グローバル経済システムなどすべてを含んだものとして出てきます。当然マネー資本主義もそうですし、それ以前の製造業を中心とした「アメリカ型資本主義」もそうですし、ソ連や中国などで実践されてきた共産主義システムもそうです。大英帝国時代の植民地主義もそうですし、貨幣経済そのものを指しています。

従って、『百姓レボリューション』の中で小野寺隆たちが展開する革命は、マネー資本主義からの離脱などというそんな甘っちょろいものではなく(笑)、貨幣経済システムそのものからの離脱なのです。

里山共産主義

つまり、彼らはお金のない社会を目指しているのであり、定義的には里山共産主義と言っていいでしょう。ソ連や中国で実践されてきたシステムは必ずしも=共産主義ではないようです。例えば日本共産党の考え方はソ連や中国のシステムと大きく異なり、むしろ北欧で展開されている社会主義に近いようです。

それでも、共産主義というと国家が統治するイメージがあると思いますので、里山共産主義のほうが、より小野寺たちが行おうとしている営みに近いでしょう。

里山、つまり国家ではなく、村が中心となったシステムで、小さな自治体による自治が、それぞれが小国家として機能し、独立的に展開していくものです。

里山3要素であるスリーS

つまり、小規模であることが重要なのです。スモールでスローでサステイナブル(持続可能)という里山に代表される要素が、単なる共産主義とは異なる部分です。

お金のない社会

小野寺隆たちがはじめた百姓ビレッジは300人ぐらいの小人数で構成される小さな共同体で、食、エネルギー、その他あらゆる生産活動をすべて自分たちで行うという完全自給自足型コミュニティです。生産活動以外にも、教育、医療、メディアなどがすべてコミュニティ内で行われ、ひとつの国であるかのように完全に独立しています。

貨幣は存在しません。物々交換も存在しません。なぜなら必要なものはすべてコミュニティから供給されるからです。住民たちは代わりに労働力をコミュニティに提供します。

三方よし型里山資本主義

百姓ビレッジは全国各地にできていくのですが、それぞれ独立しているためにすべてが同じシステムで動いているわけではありません。『百姓レボリューション2』に登場する百姓ビレッジ滋賀(蒲生の輪)はそのいい例です。ここには貨幣が存在し、小野寺隆たちがつくった百姓ビレッジ栃木のように共産主義的なシステムはありません。各世帯が独立していて、それぞれが個人事業主として事業を行い、それを地域通貨を通して交換していきます。そういう意味では資本主義なのですが、里山資本主義といったほうがいいでしょう。スモールでスローでサステイナブルの里山3要素を兼ね合わせ、山と田畑のある里山で展開されているからです。

そして従来の資本主義経済システムからは完全に独立しています。銀行はローカル銀行を使いますが、そこでは近江でしか使えない地域通貨のみを扱っています。また利子がありません。つまり、利子に基づいた銀行システムという資本主義経済システムと貨幣経済の中心にあるものが存在しないために、資本主義とは性質的に大きく異なります。

この全く新しい経済システムの基盤となった思想体系が、近江に昔から存在する三方よしの概念です。「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」

蒲生の輪をつくった長嶋達郎は、「世間よし」を環境的にも社会的にもよしと捉え、それを追求した時に、里山をベースとした持続可能な経済システムと、利子がない社会的に公平な経済システムに到達したのです。

『里山資本主義』の感想

『里山資本主義』では、里山にて自然の資源をうまく活用し、循環型の経済を確立していくことが提案されています。

現在のシステムを維持しつつも、その中で、サブシステムとして新しい仕組みを作り上げていったらどうかと。

現時点では、もっとも現実的な路線だと思います。『百姓レボリューション』に登場する里山共産主義的な展開は、実際に行うにはまだ時期尚早でしょう。

とにかく、できる人は里山環境のある場所に移住し、農的暮らしを始めるといいと思います。

とはいえ、田舎で生活するには様々な問題があることも事実です。

その辺が『里山資本主義』にはあまり書かれていませんでしたが、自治会費、冠婚葬祭にかかる費用、ガソリン代を含む車の維持費など都会ではかからない費用が出てきます。家賃が安くても、計算すると都会生活と出費は大きく変わらないかもしれません。

ですから、仕事をきちんと確保した形での移住をすすめます。

できる人がどんどん田舎に移住し、ローカルで小規模な生産活動をしていくことで、徐々にそのサブシステムができあがっていき、いずれはそれがメインシステムと入れ替わっていくことでしょう。

『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』(角川oneテーマ21)

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